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新作歌舞伎『陰陽師 滝夜叉姫』 [★伝統芸能]

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いやー、凄いすごい素晴らしい!

夢枕獏の陰陽師―瀧夜叉姫〈上〉 (文春文庫)の新作歌舞伎。

何が良かったかって、配役が素晴らしい。みなさん「ニン」。
各々の個性が最大限引き出されて、これ以上ない適役かと。

現代劇かと思うぐらい、台詞がわかりやすい。
現代で時代劇を作るような台詞回しといえばいいかな。
流石に陰陽師という職業を知らないと厳しいけど、それさえ知っていれば解説や事前予習は必要ないくらい。

実はタイトルの滝夜叉姫は、小説でも存在感が薄い。重要だけれども脇役。
本質は安倍清明とその親友・雅弘に重ねて、平将門と好敵手・俵藤太の友情を描き、更に人間の業というものを鮮やかに描いた作品。
歌舞伎は化粧を見ればわかるのだけど、「公家悪」はたった一人なのですよね。
ということで純粋に悪人として描かれるのは興世王だけ。

結構登場人物が多いが、場でうまく仕分けた。
海老蔵の平将門は、東北復興の思いも台詞にのせて、情に篤い故に鬼になる悲劇の勇将を、なりきり演技で魅せた。
尾上松緑は、男らしい剛直な俵藤太そのものだし、菊之助の滝夜叉も父を恋慕する世間知らずの姫を好演。
七之助も二人の男で揺れ動く女心を、女よりも女らしい所作で表現。
そんな中、一人悪人なのを、愛之助は嬉々として怪演していたように思う。
蘆屋道満を飄々と演じた亀蔵も好き。

とはいえ、やはり屋台骨は勘九郎と染五郎
原作・漫画・映画に派生した清明と雅弘の、ゆるくもがっちり信頼しあい補完しあっている様を表現できないと、この舞台は成り立たない。
理を知りすぎて孤独な清明というキャラをさらりと受け止める雅弘の、器が大きいのか馬鹿なのか際どい実直朴訥とした雰囲気を出せないと、清明も際立たないのである。
ということで、「滝夜叉~」では完全に脇役に回っているこの主役たちが、舞台を組み上げる基礎になるのであって、一番雅弘が重要だともいえると思う。その点、勘九郎はちょっと線が細い感はあるとはいえ、内面的にはバッチリ雅弘だった。

舞台のことでいえば、松緑が大百足との大立ち回りで荒事を表現し、歌舞伎らしさを担っていた。
台詞も短く切りあがる感じで、歌舞伎の言い回しに近く、かっこいい。
首塚伝説につながる脚本もなかなかで、将門の首から血が滴るなど仕掛けも満載。
将門ご乱心の後の、屋敷のデザインも斬新で面白かった。
時系列が複雑な物語を、字幕で映写するアイデアもいい。
舞台が回りながら場所が移ろうことや、時間が経過する様を表現するのも歌舞伎舞台ならでは。
残念なのは、三階袖だったので、まるで花道が見えないこと!すっぽんなどの仕掛けを見たかった~

ちょっと苦言を呈するなら…
一場目の、百鬼夜行に出くわして喰われる従者の表現が、ちょっとわかりづらいかなと。
ドキュメンタリーで海老蔵が指摘していたように、もっと叫んで「喰われる~」っていうように大袈裟にしたほうがいいんじゃないかな。そうすると、幼少時に妖怪と戯れていた滝夜叉の、妖術使いの異質な才能も強調されるように思うのだけど。
あと清明屋敷で式神と戯れるシーンね…少し長いかな。
おば様たちは大喜びだったけど((染五郎のブログで書いてあったが、パトラッシュというらしい)。
丁度9/18に放映されたドキュメンタリーでラマンチャ父が珍しく語気を荒くして苦言を呈してたけど、「コメディが好きで自分のニンをわかっていない」とかなんとかって、こういう事を指しているのかな(笑。

ラスト、全てが終わり朝日が差し込むシーン…計算された立ち位置で、各々が決めポーズ。
そこに流れるオリジナルのテーマ曲…尺八の音色が響いて得もいわれぬ余韻が・・・迂闊にも目頭が熱くなりました。
うまく言えないが「もののけ姫」を見た後に襲った感情に似ている。
これはいつかまた演るでしょう。いや再演しなきゃおかしい!

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↑歌舞伎座会場内でしか買えない、染五郎さん、き乃はちさんのサイン入りCD

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↑大河ドラマ「龍馬伝」の作曲者でもある「きのはち」さん

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↑場内オリジナルの印伝キーケース


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